家庭の事情で海外で生活を送りながら独学で勉強し、慶応義塾大学経済学部の通信教育課程を受け、最終的に東京大学の教授までになった、著者、柳川範之氏の独学の勧めです。
「独学勉強法」というタイトルから、具体的な勉強方法の書いてある本を予想されるかもしれませんが、本書の内容は、独学で勉強するために必要な考え方を重点的に解説している本です。他の勉強法の解説書と違うのは、本書では独学のやり方は人によってそれぞれ異なっているということを主張している点です。書き手の独りよがりな勉強法の押し付けの本とはまったく違います。
日本では小中高と受験を経験してきた人が多いですが、本書で書かれている独学とは、そういった答えのある勉強ではなく、
「答えのない問いに自分なりの答えを見つける勉強」
であると書かれています。
ですが、決して受験勉強や資格の勉強を批判しているわけでなく、あくまでもすべての勉強は最終的には「答えのない問いに自分なりの答えを見つける勉強」につながっているという意識を持つことが重要であると指摘しています。
独学の最大のメリットとして自分のペースで勉強できる点を挙げています。自分の学びたいことを自分のペースで勉強する。素晴らしいですね。勉強というと、学校の先生や両親から、がみがみ言われてしかたなくしてきたという人が大半だと思いますが、真の勉強とは、誰からも強要されず、好きな時にどんな場所でもできるものなのだということが、著者の生い立ちに裏づけされている点からも、読み取ることができます。
私は一浪して入学した立命館大学を障害を負ったため中退した経験があります。30代になり、今の仕事も順調にこなせるようになってから、再び大学で学びたいなぁと、ぼんやりと考えることが増えてきました。この本を読んで、
「勉強できるのは学生だけじゃない。むしろ成績や評価にとらわれないで自由に勉強できる、社会人の方が、本当の意味での勉強ができるのではないか?」
と思いました。なんだか洗脳されちゃってますね(笑
本書の後半では、少し勉強の方法論的なものにも触れています。少し紹介しますと、
・資料や情報は最初から集めすぎない
・本の中に正解を探さない
・マーカーを引くより繰り返し読む
・学びを熟成させる
・学びの成果をアウトプットする
などです。
興味が持てたらぜひ本書をごらんください。
本書は、両親や教師から勉強しろとうるさく言われている人たちには、あまり心に響かない内容かもしれません。でも、私のようにもう一度勉強をやり直したいなぁとぼんやり考えている社会人にとっては、なんだか背中を押してくれるような内容の一冊になると思います。学びをやり直したいすべての人にお勧めできる良書だと感じました。